金閣寺 感想

やっっっと金閣寺を読み終わった。

長かった~ しっかり最後の解説まで読んだ。結論から言うと、なぜ金閣を焼いたのか私なりの理解はできたけれど、共感は少なかったかな。

私は文学小説とかよりも推理小説を読んできた人なので、こういう堅い小説を読んだ経験が少なくて読むのに時間がかかった。漢字の意味調べながら読んでたし。本を読んでいて主人公と私の人生観が全く違うということは分かった。「どこか子供だな」と思うことが何回もあった。この小説は「美」について描かれた本で、主人公は金閣寺が美そのものだと思っている。言わば究極の美。実際の金閣寺放火事件を題材にして書いているらしいから戦後を舞台にして描かれている。だから、結果的には主人公は金閣寺を焼いてしまうのだけれど、なぜ美そのものである金閣寺を焼いたのか。

主人公の金閣寺への認識が実物の金閣寺の美そのものよりも巨大なものに膨れあがっている。だから、実物の金閣寺を消し去ることで自分の理想の金閣寺を実現しようとした。それと同時に金閣寺に来る客からとった金で豪遊する老師、金閣寺を穢し、無碍に扱うアメリカ兵や共にくる女たちに「普遍的だと思っていたものは普遍的でなかった」と気づかせたかったのではないか。金閣寺を焼く行為が世界を変える行為なのだと、今の腐った日本人を変える手段なのだと主人公は思っていたのだ。また、主人公から何者でもない自分が嫌で何者かになりたがっているという印象も受けた。金閣寺を焼くことで何者でもない自分から抜け出そうとしたのだ。そういう考えからすごく青年期特有のものを感じる。主人公は自身のことを「暗くて、人より劣っている」と自評しているが、自意識が高く、凡人ではないと思っているし、世間知らずな部分もある。そういう意味で子供であると私は感じた。主人公はそのような自意識と周りからの自分の評価にズレが生じていたのも気づいていただろう。金閣寺を燃やすという行為は色々な意味で自分の中の評価と周り、いわば世間からの評価を擦り合わせるための行為だったのではないかと思う。しかし、それは主人公の自己満足にすぎず、それ以上でもそれ以下でもない。それ以外に価値は持たない。主人公は金閣寺を焼くための理由付けをいくつかしているが、結局は自分のために金閣寺を焼いたのである。金閣寺を焼くことは自身と世界の間に空いた溝を埋めるための行為であり、そうすることは主人公がこれから生きていく上では必須の行為だったのだと思う。

この本には人が抱える負の感情や葛藤、様々な欲求が多く登場する。そういう部分では共感できることも多々あるが、それが金閣寺を焼く動機となったことは到底理解できない。それは、この本が戦後に書かれた本であり、今私が生きている現代社会とは大きく環境が違っているからという部分もあると信じたい。